Last update : '07/07/15
PC-9801時代ももはや晩年と言うべき時期に発売された (株)ARTDINK の1994年末作品。
タイトルが意味するところは『ハウ・メニ・ロボット2』であろうと思われますが、共通点はロボットが出ることだけで内容の繋がりはないと思います。
あなたの目的はこの地に600mの世界最高層ビルを建てること。
積み木遊びのようなチープさと箱庭感がたまらない、一風変わった建築シミュレーションです。
斜め上視点のマップに図面を引いていく感覚はどことなくA列車シリーズに似ています (効果音も一部受け継いでます) 。
しかし今回は図面を引いただけではビルは建ちません。レゴブロックのような資材をせっせこ運び、図面の位置に積むのを繰り返してようやく建物が形となります。
実際に作業を行うのは16体のユーモラスなロボット達。
彼等はみな自律型のすぐれものですが、自律型なので「右へ行け」「左へ行け」といった直接的な指示は出せません*1。動き出したらとにかくロボットを信じて見ているしかないのです。
おかげで対処できない事態に陥ると妙なことになります。道をふさいだまま寝込んでいたり、一箇所に寄り集まって井戸端会議?をしていたり。
これは改良しておく必要があるでしょう。
ロボットの行動パターンの作成が、このゲームのもう一つの柱となります。
そしてこれこそが本作最大のセールスポイント。
なんと本作には mini-C という独自のC言語コンパイラが搭載されており、C言語でロボットの行動を記述するのです。
プログラミング経験者にもおもしろく、未体験者には勉強のきっかけとして最適!という趣向。
これは大いに話題になりました。ベーマガ*2や月刊アスキー*3など雑誌でも特集が組まれました。
実際には言語仕様に少々癖があるため、即座に主流のC言語に応用できるとは限らなかったのですが、多くの「Cに興味はあるけどやったことない」ユーザーの背中を押してくれたことは間違いありません。
色つきで見やすい専用エディタにはオンラインヘルプも完備されていて、ちょっとした統合開発環境。
付属サンプルが豊富なのも嬉しいところです。プログラムに興味がない人でも、サンプルを使い分けていくだけで十分ビルを建てられるように配慮されています。
ちなみにロボットのプログラムは、行動パターンを決めるということでゲーム内では「血液型」と呼ばれています。といっても特に体系になっているわけではないので単に「性格」でもよかった気がしますが…。
さて実はこのゲーム、かなりヒマです。
実はなどと言わなくてもアートディンクのゲームは大概途中から単調になるのですが、HR2 のヒマさは群を抜いています。
プレイヤーが直接手を下せることといえば、ロボットの設定、エルグ (資材) の購入、図面引き (建設位置の指定) 、ロボットのための標識の設置、不要物の撤去。おおよそこのくらいです。
よっていったん汎用的なプログラムを組み、工事を軌道に乗せてしまえば、あとやるべきことは定期的に資材と図面を追加するだけ。見ているだけでどんどん建設が進んでしまいます。
もっともこのゲームの単調さはある程度狙ったものかもしれません。
たとえばやけに豪華なのがBGM。クラシックからフュージョン調のオリジナル、はたまた過去作からの名曲選まで、ずらり52曲。各枠から4曲を選んで連続再生できるようになっています。
またいつものように画面に所狭しと並べられている機能ボタンも、今回はマップ表示・移動関係がほとんど。
むしろ「単調でもいいじゃないか」とばかりに環境ソフトとしての機能を充実させた、という見方もできそうです。
ともかくずっとモニタの前に座っていても仕方ないですから、ここはつけっぱなしで放置しておいて時々様子を確かめにくるというのが正しい遊び方でしょう。
もちろんあえてこまめな調節が要るプログラムを使ってみたり、一層ごとに構造が変わるアバンギャルドな建物を設計したりして自分の手間を増やしてみるのもおもしろいですが。
このように制約が少なくマイペースで進めていけるゲームですが、しかしどうしても避けられない障害というものも存在します。地震と倒壊です。
五種類の資材にはそれぞれ重さと耐久度が設定されており、当然積めば積むほど下層にかかる負担は増大します。
適所に柱や壁を設け、あるいは不要な床や階段を作らないようにして、できるだけ崩れにくい設計になるよう考えなければいけません。
さいわい地震のほうは初期設定でOFFにもできるものの、過重対策だけは絶対に必要。
一度崩れてしまうと元通りにするのはほぼ不可能です。そこから建築プランを練り直すしかありません。
記念すべき300m地点の足場を組んだとたんに1〜10階がドスンと潰れた日には、まるで自分が必死で建ててきたこの建物が実はテトリスだったと知らされた時のような空しさに襲われます。
この際立原道造よろしく廃墟になることを前提に建築するのもまた一興?
ゲームとしては単調すぎ、学習ソフトとしてはもう少し親切さが欲しいかな、といった感想ですが、しかし環境ソフトとしてはかなり優れています。
なにしろこれを起動している間は他のことができません。横で本か問題集でも開いておかないととても間がもちません。
定期確認が必要ながらもそのスパンは比較的長め、それでいていつ見に行っても確実に成長が見てとれる建物。この理想的なバランスは、私の高校受験そして大学受験にも大いに貢献してくれたのでした。
それにしても重い!
ロボットを16台同時に動かすと、486DX2 66MHzでも一秒つき一歩くらいしか進みません。
こういった見てるだけ型のソフトこそ Windows で…と行きたいところですが、エミュレータ内で動かすにも相当CPUパワーを喰われます。
スタンドアロンの Windows 版リメイク、出ませんかねぇ……出ないでしょうねぇ……
ちなみに結局四年ほど動かしていた計算になりますが、未だにビルは完成してません。床多すぎた。
実はこのゲームやたら誤植があります。
毎回出る「NOW COMPAILING」くらいならまだ害はないですが、ひどいのは「baggage」が全部「buggage」になっていること。組み込み関数までこの名前です。このゲームでC言語を学ぼうとした学生さんはひょっとしたら代わりに英語の単位を落としてしまったかも知れません。
資材は種類と搬入位置によって値段が変わりますが、撤去時の払い戻し価格は常に一定です。
よって地表で一番安い資材を購入しすぐに撤去すると、払い戻し価格の方が高くなるので無限に資金を増やせます。これで破産の心配はなし!
明らかにずる技ですが、もともと資金のやりくりが重要なゲームではないのでそれほど大きな影響はない気も。
むかし組んだロボット用プログラムが残ってたので恥さらし。
最終更新は'99となってますが基本的にはもっと前の中学生時代に書いたものですし、あくまで自分用なので実用性には期待しないで下さい。
付属サンプルの ERGJOB_B.C をベースにした改良版。資材の色によって建設するものを変えるオールマイティ型です。緑パイロンを適当な間隔で置いておけば (目安一階につき一個) それを中継点にして階段を上り下りします。どうしようもなくなったら右下にエラーコードを出します。
たしか本来は階段を自動でサーチする (だから名前は ALL & Auto Up/Down) ように作ったはずが、しょっちゅうつっかえるので結局パイロン経由に変えたんだったと思った。
*1 : 一応マニュアル操作モードというものもありますが、本来意図されているプレイではないように思います。
*2 : レビュー1995年1〜2月号、特集第一回が同3月号。ただしどうも第二回以降はお蔵入りになったらしい。
*3 : 解説記事に加えて巻末にCソースが載ってた記憶があるけどうろ覚え。